研究で初めて基板の設計を, KiCADを用いて行った.
そしてそのデータから基板加工機'(MITS Eleven Lab)で加工した.
その設計手順や, 「もっとこうしておけばよかった」という気づきや学びをまとめる.
なお, ここで単位はmmを使っているが, センサの規格上, inchを使ったほうが細かいずれはなくなる.
PCBの基板外形だけはmmを使い, センサのパッドやシンボルの大きさはinchを使うほうが正確な設計になると思われる. (ユニバーサル基板の穴の間隔が2.54mm=0.1inchであるため)
やったことの概要と完成形
IMUセンサのICM-20948とマイコンのSeeeduino XIAOをつなげた. その時に, 電圧の都合上, DCDCコンバータも用いた. はんだ付けした後完成形を次に示す.下の図は完成形で加速度とジャイロと地磁気を計測することができた.
(右下の裏面において, 1本線がつながっておらず, 後付けで線をはんだつけしている. そのことについては「失敗談2」にまとめた)


手順
シンボルエディタ
まず, kiCAD画面からシンボルエディタを選択する.

ここでは例としてIMUセンサのICM-20948のシンボルエディタについて書く.
ICM20948のシンボルエディタは既存のライブラリには存在しなかった.
そこで, 2×5のピンヘッドを持った下の図のシンボルエディタを別名で保存し, 編集した.

下図が編集したICM20948である.

シンボルエディタは, ICの各ピンの役割と接続ルールを定義するものである.
どこのピンがVccでどこのピンがGNDで, どこのピンが入力で出力に該当するのかを, シンボルエディタで設定する.
ここで重要なこととして, シンボルエディタで設定したピン番号は, フットプリントエディタでも同じピン番号にする必要がある.
下の図において, IMUセンサの電源入力のピン番号は2である.

私は上記のピン番号を統一させることを知らずPCB設計まで行ってしまい,
加工して初めて, 「GNDの向きが違うなぁ~」と思い, その必要性に気付いた.
PCBの配線をPC上でつなげているとき, GNDが本来の場所にあるかどうかをチェックするといい.(GNDでなくてもいいが, Vccの横にあるはずのGNDがVccの下になっていたりするとピン番号のずれが原因であるかもしれない.)
「ピン名」はユーザの可読性のための設定であるためある程度適当でもいい.
「エレクトリカルタイプ」はERC(電気ルールチェック)に影響する.
フットプリントエディタ
フットプリントエディタは, センサやマイコンの外形の大きさや穴の位置や穴の種類等を設定するエディタである.
フットプリントにおいても既存のライブラリにはないため, 形状が似た,「PinHeader 2×5」から余計なものを削除し, 下図のように, 外形をICM-20948のものに合うように変えた.

パッドの設定において, 最も大事な設定の一つがパッド番号である.
シンボルエディタでも述べたように, シンボルエディタのシンボルと同じパッド番号でないと同期がなされない. シンボルエディタのGNDのパッド番号が仮に1だったとすると, フットプリントエディタのGNDのパッド番号も1にする必要がある.
加えてパッドタイプも重要である. ピンヘッダで差すタイプなら「スルーホール」にするが, 完成品で示したようにコンバータはピンを立てると縦に飛び出してしまい欠損のリスクがある. そこで「パッドのタイプ」をSMDに変更した.

スルーホールの場合, 下図のように, 穴の系とパッドの系もここで設定する.
ここではパッドの直径が1.7mm, 穴の直径が1mmになっている.
はんだづけする際に, このパッドの上にはんだをのせる必要がある. そのため小さいと後々面倒になる.

回路図エディタ
シンボルを設計したら後は, 回路図エディタの右側の「シンボルを配置」から設計した3つのシンボルを取り出し配線で回路を設計する. 上の「エレクトリカルルールチェッカー」を使うとエラーの検出ができる.

PCBエディタ
回路図エディタのルールチェッカで問題がなければ最後はPCBエディタで配線パターンを決める.
回路図からPCBエディタを起動し, 配線パターンを設計するが, 同期をとるために気を付けたいことがある.下の図のように回路図と同じ名前の「.kicad_pro」を起動する必要がある.
同じディレクトリで違うkicad_proを起動して回路図ファイルを編集することも可能であるが, それだと回路図ファイルからPCBファイルを読み込めず,スムーズに配線の設計ができない.

(上の図は一つのディレクトリに複数のkicad_proファイルがあり, たぶんよくない….)
今編集しているkicad_proファイルから回路図を開き, 「フットプリントを割り当て」を選択し, シンボルとフットプリントを対応させる.


画面の右上の「PCBエディターに切り替え」を選択する.

右上の「回路図から基板を更新」を選択.

基板の更新を行う.

すると回路図からシンボルや配線パターンの情報をもってくることができる.

あとは, シンボルの配置や, 配線の方向や太さや外形の大きさ等を設計するだけだが,
両面基板加工の場合, 最初に, どのシンボルを表にして, どのシンボルを裏にするか決める必要がある.
今回はマイコンのSeeeduinoを裏にしたいため,

プロパティから面を裏に選択する.
何が表の配線で, 何が裏の配線で, 何がドリルの穴で, 何が外形のパターンなのかを区別するためにいくつかレイヤーがある. 基板加工を行う際に, KICADから複数のファイルを出力するが, 私が行ったときは
表の配線パターン(F.Cuに対応)
裏の配線パターン(B.Cuに対応)
ドリルの加工パターン
外形の加工パターン(Edge.Cutsに対応)
の4つだった.

レイヤー
Edge.Cutsで矩形を設計.

配線の太さやビアの大きさは「基板の設定」の「ネットクラス」から設定することができる

ネットクラスの設定が終わったら, 次に配線パターンを設計する.
ビアは「V」キーで」打つことができ, 中心の穴はEdge.Cutsであけた.

そして裏面をGNDで塗りつぶしを行った.
塗りつぶしは, 「B.Cu」を選んで, 「塗りつぶしゾーンを選択」でGNDを選びOK.
下の画像のように, 基板全体を囲む.

斜線で囲まれた部分を右クリック. 「ゾーン」を選択
「すべてのゾーンを塗りつぶし」を選択すると, 裏全体にGNDが塗りつぶしされる.


当初私は, この画像(表面)で赤で示した箇所は, 金属で触れているため, 通電していると思っていた.
しかし, はんだづけは裏面で行われているため,表面では通電していない.
表面に通電させたい場合は, 裏面からビアを通して線を作る必要がある.
はんだづけした初日は, これでもうまく動作した.
しかし, 数日すると隙間ができたのか, Arduinoでうまく計測ができなくなった.

ビアを通して, 穴にエナメル線をを入れてはんだ付けした写真を下に示す.

また, ビアの位置もはんだ付けするため, できる限り周り線がこない場所がいい.
そして穴径をできる限り大きくすると, はんだ付けが楽. 最初は「穴が大きいと線と基板に隙間が出て通電しないのでは?」と思っていたが, そんな心配はなかった.
だいたいビア直径1mm, 穴径0.5mmで問題ない.
本記事1枚目の画像の右下で1本の針金がはんだつけされているが, これも同様のミスである.
回路のルールチェッカで問題がなかったとしても, このピンははんだ付けで通電するピンかよくよく考える必要がある.
ファイルの出力
PCBの設計が終わったら基板加工機(MITS Eleven Lab)に読み込ませるためのファイル出力を行う.
下のように「プロット」から出力を行う.

右上でファイルの保存場所を確認し, 「含めるレイヤー」に漏れがないか確認する.
F.Cu, B.Cu, Edge.Cutsの3つがあれば十分だと思うが一応デフォルトで出力を行った.
また穴あけ加工を行う場合は, 右下の「ドリルファイル生成」を選択する.

ドリルファイルにおいてhあ, 「PTHとNPYHを一つのファイルにマージ」にチェックを入れる.
PTH(Plated Through Hole)はスルーホール部品の足, ビアなどに使う穴のことを指す. 主に電気を通すために使われる穴である.
NPTH(Non-Plated Through Hole)は, 機械的な固定を目的とした穴である. ねじ穴などがそれに該当する.
通常この二つの加工条件は異なるため別々のファイルになることが多い.
この「PTHとNPYHを一つのファイルにマージ」にチェックを入れると
「xxx-PTH.drl」, 「xxx-NPTH.drl」のような別ファイルを作らず, 「xxx.drl」の1ファイルに統合しまとめることができる.
一つにまとめられたファイルはCAM側ではPTHの穴か, NPTHの穴化は区別される.

生成でできたGerber Data(ガーバーデータ)を加工機のソフトで読み込むことで, 加工経路が印刷される.

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