1回目編集日:2024/5/12
2回目編集日:2024/5/18
研究をしていると制御の知識よりも、力学の知識を忘れていることに気づくことが多い。
そこで今回は質点系についてまとめる。
質点とは
質点とは質量はあるが、大きさのない点状の物体のことである。そして、運動には回転運動と併進運動がある。併進運動のみ、つまり回転運動を伴わない場合は、その運動の特徴を質点の運動の解析で理解することができる。これを質点近似という[1]。
形のある物体の重心の運動は、質点と同じ運動法則にしたがうため、形のある物体は質点の集合体として解析することができる。
図1のように形を無視して点として扱う。(あまりにも無理があるが)
なので仮に回転運動(自転のように)している物体は質点近似されるとその影響がなくなる。
この質点近似を使った代表的な法則が「ニュートンの法則」。
ニュートンの法則
とても有名なニュートンの法則。しかし長らく触れていないとどれがどの法則で、どんな前提を置いていたのかも忘れてしまう。
ニュートンの法則 第1法則 慣性の法則
静止している質点は、力を加えられない限り静止を続け、動いている質点は、力を加えない限り、同じ速さで直線運動を続ける。
ニュートンの法則 第2法則 運動方程式
力$f$を受けている質点の位置座標$r(t)$は運動方程式
\begin{align}
m\frac{d^2r}{dt^2}=F,
\end{align}
に従って変化する。$m$は質点の質量(物体固有の動きにくさ、慣性の大きさ[2])である。
ニュートンの法則 第3法則 作用反作用の法則
2個の質点1,2があり、お互いに力を及ぼしあっているとき、質点1が質点2からける力$F_{12}$は、質点2が質点1から受ける力$F_{21}$と、大きさが同じで向きが反対である。つまり、
\begin{align}
F_{21}=-F_{12}.
\end{align}
質量中心の運動
図2のようにn個の質点の集団があるとき、それぞれの質点はニュートンの法則にしたがう。
各質点の質量と時刻$t$における位置ベクトルを$m_{i}, r_{i}(i=1,2,3,…)$とする。
ここで$i$番目の質点が受ける外力を$F_{i}$, それが$j$番目の質点から受ける内力を$F_{ij}$とかくと、質点の運動は以下のようにあらわせる。
\begin{align}
m_{i}\ddot{r_{i}}(t)=F_{i}+\sum^{n}_{j=1}’F_{ij} , \\(i = 1,2,3,…n) \tag{1}
\end{align}
$\sum$’はjについての和のうちで$i=j$を除くことを意味する。つまり質点が自分自身にたいして働く力は考えない。図の青い力が内力であり、外部から加わるオレンジ色の力を$F_{i}$と定義している。
質点分だけ(n個)の連立方程式を解くとそれぞれの質点の位置がわかる。しかしそのためには内力$F_{ij}$を求める必要があり、$n$の数が大きくなると困難である。そこで、各質点の具体的な運動にたちいらずに、全体としての運動に注目する。すなわち、全ての質点んついての和をとる。
式(1)の両辺の、すべての質点についての和をとると、
\begin{align}
\sum_{i}m_{i}\ddot{r}_{i} = \sum^{n}_{i=1}F_{i}+\sum^{n}_{i=1}\sum^{n}_{j=1}’F_{ij} , \tag{2}
\end{align}
質点それぞれにはニュートンの第三法則(作用・反作用の法則)が成り立つため、
\begin{align}
F_{ij}=-F{ji},
\end{align}
といえる。
つまり、$j$番目の質点が$i$番目の質点に及ぼす力は、$i$番目の質点が$j$番目の質点に及ぼす力と大きさが同じで向きが逆になる。式(2)の右辺の第二項目は
のようになり、内力はお互いを打ち消しあう。
したがって式(2)は
\begin{align}
\sum^{n}_{i=1}m_{i}\ddot{r_{i}}=\sum^{n}_{i=1}F_{i},
\end{align}
が成り立つ。
雑談
質点系は物体の形、大きさが定義されていないため、慣性モーメントも考慮できません。
その時に回転の運動エネルギーを表したいときは座標系で考えるといいと思います。
例えば、下の図のような倒立振子があったときに、「振子を質点系で考える」とは、長方形の棒状のものが緑の一点で代表されるという意味です。
したがって慣性モーメントを$I=\frac{ml^2}{12}$(細い棒の中心)と定義して回転エネルギーを求めることはできません。
($K=Iw$として求められない。$K=運動エネルギー$,$I=慣性モーメント$,$w=角速度$)
ですので、原点からの変位座標$(p_x,p_y)=(\frac{1}{2}L\cos\theta,\frac{1}{2}L\sin\theta)$から微分して速度を求めると、
$(v_x,v_y)=(\frac{L}{2}\dot{\theta}\cos\theta, \frac{L}{2}\dot{\theta}\sin\theta)$
より、$v=(\frac{L}{2}\dot{\theta}\cos\theta)^2+( \frac{L}{2}\dot{\theta}\sin\theta)^2$を使って、運動エネルギー$K=\frac{1}{2}mv^2$が求まります。
参考文献
[1]考える力学
[2]コマの不思議, 黒須茂, 平成16年, 山文社
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