bode線図からわかる情報

古典制御

bode線図を初めて大学で勉強した際には周波数によってゲインや位相が変わることくらいしかわかりませんでした。しかし勉強していくにつれbode線図が持つリッチな情報量に気付き始めました。今回はその内容を書いていきます。

想定する読者

・bode線図の何が便利なのか知りたい方

まず注目するシステムが閉ループか開ループかで見るべきところが変わります。
そこすらも忘れていることがあります。(笑)

閉ループ

閉ループ系のボード線図では図1のようなゲイン線図が描けます。

図1 ゲイン線図

この閉ループ系のボード線図を見たときに、以下の3点を評価することができます。
・速応性…バンド幅がどれだけ大きいのか。バンド幅が大きいと早く反応する。
・減衰性…ピークゲインがどれだけ小さいか。小さいと減衰する。大きいと振動する。
・定常偏差…直流ゲインが|G(jw)|=1(0dB)であれば定常偏差がなくなる。

P制御

例として閉ループ系のゲインを上げたときの周波数特性を図2に示します。

図2 ゲインを上げたときのボード線図

ゲインを上げると低周波ゲインが0dBに近づき定常偏差がなくなる方向に向かっています。
そしてバンド幅も大きくなっているため速応性も上がっています。
一方でピークゲインも大きくなってしまっているため振動的になっていることがわかります。

PD制御

次に図3にPD制御(Pゲインは一定でDゲインを上げた)のボード線図を示します。

図3 PD制御のボード線図

微分ゲインを上げると、ピークゲインが小さくなり、減衰していることがわかります。
バンド幅は若干大きくなっているため速応性も改善しています。
が、低周波ゲインは0dBにはならず、定常偏差が残っています。

PID制御

最後にPID制御(P,Dゲインは一定で積分ゲインを上げた)のボード線図を図4に示します。

図4 PID制御のボード線図

積分ゲインを0から5,10と上げると低周波ゲインが0dBに近づき、定常偏差がなくなっていることが確認できます。バンド幅は変わらないように見える一方でピークゲインが大きくなっていて振動的な応答が予想できます。

開ループ

開ループは閉ループと評価する方法が違うので注意してください。
・速応性…ゲイン交差周波数を大きくすれば速応性がよくなる
・減衰性…位相余裕が大きくなると減衰性が改善する。
・定常偏差…低周波ゲインを大きくする(直流ゲインを|H(0)|=$\infty$にする。)
・安定性…ゲイン交差周波数<位相交差周波数を維持する。

以下の例を使って説明します。

P制御

Pゲインを上げたときに図5のようなボード線図が手に入ったとします。ここでどこを見ればいいのでしょうか。ゲインを上げると点で表示されているゲイン交差周波数が上がっているのがわかります。
なので速応性が向上しています。一方でゲインを上げたことによって位相の変化は見られないため、ゲインを上げると位相余裕が小さくなり減衰性が低下し、応答が振動的になります。
またゲインを上げても低周波ゲインが$\infty$にならないため定常偏差が残ります。



図5 開ループP制御のボード線図

PI制御

Pゲインは一定にしてIゲインを加えて変更した図が下の図6です。
この図を見てすぐにわかるのは低周波ゲインが$\infty$に向かっていることです。したがって定常偏差が0になることがわかります。
一方でゲインを上げると位相余裕が小さくなっていきます。Iゲインが10の場合は、ゲイン交差周波数の時、位相余裕が-180degを下回っているため不安定になっていることがわかります。

図6 開ループPI制御のボード線図

PID制御

最後にPID制御です。P,Iゲインは一定でDゲインのみを変更しています。
この図を見ると、まず低周波域でゲインが$\infty$になっているため定常偏差はなくなっています
そして、ゲイン交差周波数が上がっているためDゲインを上げると応答が早くなります。
加えて、位相余裕がそれにともない大きくなってるため減衰性も向上しています。

図6 開ループPID制御のボード線図

参考文献

・「Pythonによる制御工学入門」南祐樹, オーム社, 2021年

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